(1) C++の値渡しと参照渡しの使い分けや違いについて
(1-1) 「値渡し」とは?
(1-2) 「参照渡し」とは?
(1-3) 「値渡し」と「参照渡し」の使い分け
(1) C++の値渡しと参照渡しの使い分けや違いについて
「値渡し」(passed by value)と「参照渡し」(passed by reference)はメソッドを実行する際の「引数の与え方」の方式です。今回はそれぞれをどういったシーンで使うのか?や両者の違いについてご紹介していきます。
(1-1) 「値渡し」とは?
引数の「値のコピー」をメモリ上の別アドレスに作っています(元の値とは明確に異なる)。
コピーなので「呼び出し元」と「呼び出し先」とで、同じ値だがそれぞれ独立した変数を持っている事になります。従って、「呼び出し先」で値を変更しても、「呼び出し元」の値は書き換わりません(コピーを編集しているに過ぎない)。
(図113)
デフォルトでは「値渡し」が適用されます(型の後に&を付けると「参照渡し」になる)。
(サンプルプログラム)
#include <iostream> using namespace std; //③引数を「値渡し」で受取り⇒値がメモリ上の別箇所にコピーされる void addCounter(int counter) { //④引数の値に1を加算(値渡しなので、元の変数に影響なし) counter=counter+1; std::cout<<"(#1)= "<<counter<<std::endl; } int main(void){ //①変数「counter」を定義 int counter=0; //②変数「counter」を「addCounter」関数の引数に与えて実行 addCounter(counter); //⑤元の変数は加算されていないので「0」 std::cout<<"(#2)= "<<counter<<std::endl; return 0; }
(図121)実行結果
(1-2) 「参照渡し」とは?
引数の「アドレス」を渡しており、変数自身の「アドレスのコピー」(=ポインタ)をメモリ上に作っています。別名「アドレス渡し」とも呼ばれます。
「アドレス」を渡しているので、「呼び出し元」と「呼び出し先」とで同じ値を共有しており、「呼び出し先」で引数に変更を加えた場合は、呼び出し元にも反映されます。
(図114)
#include <iostream> using namespace std; //③引数を「参照渡し」で受取り⇒アドレスがメモリ上の別箇所にコピーされる void addCounter(int &counter) { //④参照渡しなので元の変数を更新 counter=counter+1; std::cout<<"(#1)= "<<counter<<std::endl; } int main(void){ //①変数「counter」を定義 int counter=0; //②変数「counter」を「addCounter」関数の引数に与えて実行 addCounter(counter); //⑤元の変数は参照渡しにより、同じく「1」 std::cout<<"(#2)= "<<counter<<std::endl; return 0; }
(図122)実行結果
(1-3) 「値渡し」と「参照渡し」の使い分け
「値渡し」は引数として渡された値を上書きしないため、値を「利用するだけ」で更新は特に必要ない場面で使用します。また、値コピー時のオーバーヘッドによりパフォーマンス悪化につながる可能性がありますので、注意が必要です(大規模なオブジェクトを値渡しして、かつそのメソッドを何度も繰り返し呼ぶ場合など)。
引数で大規模なテキストデータなどが渡されると、そのコピーの処理は負荷となるため、避けるべきものになります。そういった大規模なクラスのオブジェクトを渡す際などに「参照渡し」が役に立ちます。
「参照渡し」を使う主なシーンを4点ほど挙げます。
(表)
①引数の編集 | 関数の処理で「引数を編集」する必要がある場合 |
②引数が大規模オブジェクト | 関数の引数に「大規模なオブジェクト」を受け取る場合 ⇒値渡しだとコピーの処理負荷が発生してしまう |
③ポリモフィズム | ポリモフィズム(同じ操作でも異なる振る舞いをする事)を実現する場合。 (例) 「図形クラス」があったとして、それを継承する「三角形クラス」と「四角形クラス」があった際に、「図形」型のポインタ(別の値のアドレスを保持)に「三角形」や「四角形」の「参照(アドレス)」を渡す事で、親のメソッド等の実行結果を、子でも利用する事などが可能になります。 |
④戻り値が大規模 | 「戻り値」として非常に大きなオブジェクトを返却する恐れがある場合 |