<目的>
(1) 財務会計の「費用」と「損金」の違い
(1-1) 「費用」「収益」「利益」は「損益計算書」の用語
(1-2) 「損金」「益金」「所得」は「税務」の用語
(1-3) 「損金」(税務)と「費用」(会計)の違い
(1-4) 「益金」(税務)と「収益」(会計)の違い
(1) 財務会計の「費用」と「損金」の違い
これらの違いを理解するためには、まずは各用語の意味について確認してきます。
(1-1) 「費用」「収益」「利益」は「損益計算書」の用語
・「費用」はPL(損益計算書)におけるマイナスの総計です(売上原価、販管費、営業外費用、特別損失)。
・「収益」はPL(損益計算書)におけるプラスの総計です(売上高、営業外収益、特別利益)。
・「利益」=「費用」-「収益」です。上記の費用(4種)と収益(3種)を計算した利益は「税引前当期純利益」と呼ばれます。そこから更に税金(法人税、事業税、住民税)を考慮すると、最終的な「当期純利益」が求まります。
(参考)
上記の各項目(売上原価、販管費など)の意味については以下の記事をご参考ください。
https://rainbow-engine.com/profitloss-howto-read/
(1-2) 「損金」「益金」「所得」は「税務」の用語
「所得」は税務用語で「益金」(プラス)から「損金」(マイナス)を引いた残りの金額です。この金額に対して税金(法人税、住民税、事業税)が課税されます。
(1-3) 「損金」(税務)と「費用」(会計)の違い
(1-3-1) 損金と費用の違いは「計上基準」の違い
・「損金」は損益計算書の「費用」と同じくマイナス部分を表していますが、「マイナス計上する基準」が異なっており、会計的には費用に計上できる項目でも、税務上は認められないケースがあるため、基本的に「損金」<「費用」となります。
・「損金」<「費用」になるという事は、「所得」>「利益」になるという事で、税金を計算するベースとなる「所得」が「利益」よりも大きな金額になる事を意味しています。
・これは国が税金を徴収する際に、しっかりと税金を確保するために「損金」に計上できるお金の基準を厳しくし、課税対象の「所得」が増えるような仕組みにしているのが理由です。
上記の関係性をまとめると次のようになります。
(表)
区分 | 税務 | 大小関係 | 損益計算書 |
+ | 益金 ≒PLの「収益」 |
≒ | 収益 ∟売上高 ∟営業外収益 ∟特別利益 |
- | 損金 →費用より小さくなる |
< | 費用 ∟売上原価 ∟販管費 ∟営業外費用 ∟特別損失 |
計 | 所得 =益金-損金 |
> | 利益 =収益-費用 |
(図131)
(1-3-2) 例:損金と費用の「計上基準」が異なるケース
例えば「交際費」などは企業において「費用」扱いされるケースがありますが、税務上では「損金」としての扱いが「認められない」費用になります(※厳密には少額の飲食等では「会議費」という名目で損金処理が可能)。
また減価償却なども「損金」処理できる金額に限度があるため、ここも「損金」と「費用」との乖離が生じる可能性があります。あるいは「備品」なども基準金額以下なら損金処理が出来るといった制限があります。
(1-4) 「益金」(税務)と「収益」(会計)の違い
こちらは損金と費用(マイナス側)と比較すると差異は小さく、法人税法の「別段の定め」に記載している項目を除いては、基本的に「収益」を「益金」に計上する事が可能です。